北海道千歳市多頭飼育救済支援レポート(行政枠)⑰

申請No.17
申請日:2020年7月1日
申請/実施責任者:北海道千歳市 市民環境部市民生活課
場所:北海道千歳市
居住者: 当事者(38歳、女)
居住環境:貸家/集合住宅
生活保護の受給状況:受給していない
多頭飼育現場の猫の総数:43頭(成猫30頭、子猫13頭)
手術日:7月8日、15日、22日、8月4日、5日
協力病院:Mobile VET Office
チケット発行数:30枚(成猫分のみ申請。子猫13頭のうち11頭が保護後に亡くなり、2頭は手術できない状態)
手術頭数:27頭(3頭は体調不良で手術できず。ボランティアによる一時預かりで体調が良くなったため、後日、ボランティアの費用負担にて全頭手術済み)

申請から不妊手術完了までの経緯(報告書より)

    1. 当初は、オス猫を1頭飼っていたのみであったが、当時の彼氏から子どもを産ませたいとの希望があり、新たにメス猫を飼い始め子猫を産ませることとなった。
    2. 別れた後、飼い猫に対するサポートが得られなかったこともあり去勢避妊手術を行うことができなかった。約3年前に現在とは別のアパートで、多数の猫を抱えて多頭飼育崩壊に陥っていることが発覚した。
    3. 約3年前に多頭飼育崩壊が発覚した際には、保健所及び保護猫団体が対応していたが、全頭引き取りしないうちに当事者と連絡が取れなくなった。
    4. このことについて当事者に確認したところ、当時は仕事や弟の世話等でいっぱいいっぱいになり母にも相談できず精神的にまいってしまったとのことであった。
    5. 現在のアパートでは、当時残された飼い猫が交配を繰り返し、新たに多頭飼育崩壊に陥ったところである。
    6. 6月16日に当事者の母から、千歳市、石狩振興局、千歳保健所及び市内の保護猫ボランティアに対して「娘が多頭飼育崩壊に陥ってアパートの管理者から退去命令を受けた」と相談が入った。
    7. 当事者の母も、アパートの管理者から連絡を受けて初めて事態を把握したとのこと。
    8. 6月18日に、市内の保護猫ボランティア、NPO法人猫と人を繋ぐツキネコ北海道(以下、ツキネコ北海道)及び千歳市により、当事者の母の案内のもと当事者宅を訪問。
    9. 6月27日に、ツキネコ北海道、石狩振興局、千歳保健所及び千歳市が当事者と接触して話を聞いた。また、同日の話し合いにおいて、どうぶつ基金の審査を通過した場合は、退去命令期限である7月末までにツキネコ北海道を中心に飼い猫を捕獲する予定としていたが、飼い猫の体調が非常に悪いことが判明。猫の体調を整えることを優先し、9月末を目途に手術を行う方向で確認した。
    10. ツキネコ北海道に相談した結果、捕獲の中心的な役割、猫の運搬作業、不妊手術以外にかかった医療費の負担を行っていただくこととなり、現在も保護した猫の里親募集を行っている。
    11. 手術した猫を含めて、全頭を保護先へ譲渡した結果、退去命令期限である7月末までに当事者は当該住居を退去することができた。
    12. 3頭は体調不良で手術できなかったが、ボランティアによる一時預かりで体調が良くなったため、後日、ボランティアの費用負担による不妊手術を実施し全頭手術済みとなる。
    13. 子猫13頭のうち、11頭が保護後に亡くなる。2頭はまだ手術が出来ないため、成長を待って里親募集する際に手術予定。
手術日 オス メス 耳カットのみ
7月8日 5 4 0 9
7月15日 1 3 0 4
7月22日 4 2 0 6
8月4日 1 2 0 3
8月5日 2 3 0 5
13 14 0 27

【現場写真(支援前)】

【現場写真(支援後)】

今回の取り組みを振り返り、改善すべき点や今後の配慮事項(報告書より)
どうぶつ基金には、本件の事情をご理解いただき、チケットの交付その他貴重なアドバイス等を行って頂きありがとうございました。
多頭飼育崩壊に対する支援のノウハウが少なく、また猫等の収容施設を持たない当市ではありますが、当事者のお母様及び保護猫団体からの相談を受けて、どうぶつ基金とこのような形で協働させていただき、スピード感を持って対応することができましたこと大変感謝しております。
また、本件の解決に向け協力連携が必要と考え、収容施設を持つ千歳保健所や多頭飼育崩壊案件に対応する石狩振興局にも協力を依頼し、当事者及び保護猫団体を加えて協議する場も設けることができました。
この様な場を設けたことで、今後の方向性等をお互いに共有し、協力し合いながらスムーズに対応できたことは、本件のみならず今後の対応にも生きてくるものだと考えております。
なお、本件の解決におきましては、どうぶつ基金及びツキネコ北海道の協力があってこその成果であると認識しており、ご指導ご助言があったからこそ、スムーズな対応につながったものと考えております。今後、ご指導ご助言を生かし、また、反省点を踏まえて更にいい形で対応していきたいと思います。


どうぶつ基金スタッフコメント
多頭飼育崩壊の多くは飼い主の無知や経済的理由によって起こりますが、当事者自ら繁殖を始めたという点において今回のケースは異質です。「子猫を産ませたかった」とは何と無責任な考えでしょうか。当事者は猫の飼い主として命に責任を持ち、断固として拒否すべきでした。また、1度目の多頭飼育崩壊発覚の際には、猫の行く末が決まらぬうちに音信不通になるなど、その無責任さにあきれるばかりです。
行政とボランティアの協力によって現場にいた猫は保護されたものの、子猫11頭はその後亡くなってしまいました。誰が見ても子猫は愛らしいものです。しかし、出産は母猫の身体に大きな負担をかけるものであり、また、生まれた子猫の行き場も考えない安易な繁殖がどのような結果をもたらすのか考えてほしいと強く感じます。
千歳市様は慣れない対応が続くなか、他行政やボランティアと協力して問題解決にあたられました。今回のケースが千歳市様のよいモデルケースとなり、同様の事案において今後もお力を発揮されることを願っております。


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現場 オス メス 性別不明 耳カットのみ 合計