74_埼玉県入間市多頭飼育救済支援レポート(行政枠)

申請No.74
申請日:2022年1月21日
申請/実施責任者:入間市 環境課
場所:埼玉県入間市
居住者:当事者本人(女、51歳、製造業正社員)母(74歳、無職)、息子(30歳、パート)
居住環境:持ち家/一戸建て
生活保護の受給状況:受給していない
多頭飼育現場の猫の総数:48頭(2頭は手術済み、16頭はボランティアにより手術を実施、2頭は譲渡予定)
手術日:2月3日、17日、3月10日
協力病院:おおにし動物病院
チケット発行数:28枚
手術頭数:28頭
協働ボランティア名:入間ドッグキャットの会

申請から不妊手術完了までの経緯(行政報告書より)

  1. 6年前に職場に捨てられていた猫2頭(オス、メス1頭ずつ)を保護。
  2. 猫の繁殖について知識が乏しく不妊手術をしなかったことから、飼い始めて約3年で多頭飼育に陥った。
  3. 猫が増えたことに危機感を覚え、まずはオス2頭の不妊手術を行う。しかし、家族の医療費支払いに追われ、猫の不妊手術を行う金銭的余裕がなくなってしまった。
  4. 入院した当事者の母が病院のソーシャルワーカーに家庭環境を相談。ソーシャルワーカーから話を聞いたケアマネージャーから市へ相談があったことから多頭飼育状態であることを把握した。
  5. 世帯収入はあるものの、生活費や当事者の母にかかる医療費等の支払いで経済状況に余裕がなく、当事者が手術費用を用意することは難しい状況である。
  6. 現場確認時、強いアンモニア臭や壁の変色、床の糞の跡、清掃した大量の糞が入ったビニール袋等を確認。普段の衛生環境は立ち入り時よりも悪い可能性が高いこと、このまま放置すればさらに頭数が増えて生活環境が悪化する恐れがあることから支援が必要と判断。申請に至った。
  7. 行政で1頭ずつ猫を数えたが、逃げ回るなどして正確な頭数確認ができず。総数30頭と申請したが、実際は48頭であった(当事者も頭数を把握できていなかった)。
  8. 当事者が不妊手術を行った猫が2頭、ボランティアが費用を負担して不妊手術を行った猫が16頭。2頭はすでに譲渡先が決まっており譲渡先で手術予定。残る28頭がチケットによって不妊手術を受けた。
  9. 糞尿による悪臭(強いアンモニア臭)は残っているものの、当初確認された床の目地に入り込んだ糞は清掃され改善された。また、トイレが2つ増設されて6つになり、そのたびに交換・清掃をしている様子。また、新たに2段ゲージが設置された。
  10. 猫たちの健康状態も良好と思われる(骨が浮き上がって見えるほど痩せている猫は確認できず、ふくよかな猫が多かった)。
  11. 1頭が手術後に亡くなり、29頭は譲渡された。当事者宅には18頭戻り、そのうち9頭はボランティアが時間をかけて譲渡先を探すこととし、当事者は残りの9頭の飼育を継続する予定としている。
手術日 オス メス 耳カットのみ
2月3日 5 8 0 13
2月17日 5 4 0 9
3月10日 3 3 0 6
13 15 0 28

【現場写真(支援前)】

【現場写真(支援後)】

今回の取り組みを振り返り、改善すべき点や今後の配慮事項(行政報告書より)
全頭手術を終え、これ以上の繁殖を防ぐことができたが、当事者が頭数を把握しきれておらず、最終的にチケットの枚数を大幅に上回る頭数の存在が発覚した。上回った頭数分の手術費はボランティア団体の自費により行っていただいたので、ボランティア団体に大きな負担と迷惑をかけてしまった。
また、手術済の猫についてはボランティア団体のご協力により半分以上の譲渡が決まっている。飼育頭数が減ったことにより、飼育環境は改善に向かっていると思われるが、今後同じような事態に陥らないよう、ボランティア団体及び埼玉県動物指導センターと連携し、定期的な立ち入りと指導を行っていく必要性がある。


どうぶつ基金スタッフコメント
ケアマネジャーから市へ相談があるまで近隣からの苦情等はありませんでした。本案件の猫のように完全室内飼育の場合、犬と違って猫は鳴き声も小さく、悪臭も外にもれにくいため発見が遅れます。
そして、完全室内飼育の多頭飼育崩壊現場は悲惨を極めます。今回の現場でもオスによる共食いが発生していました…。県の動物指導センターは、オスをケージ等で隔離することやトイレの増設などの指導を行っていましたが、これだけ頭数が増えてしまっては何の意味もありません。
行政の報告書にもあるように、今回の案件が解決に至ったのはボランティアの方々のご尽力が大きかったと感じます。実際の猫の総数は48頭でチケットが足りない状況でしたが、その分の手術費用をボランティアの方々が負担することで全頭不妊手術が実現しました。多頭飼育崩壊の解決もTNRと同じ。まずは全頭不妊手術、猫と人の暮らしを立て直すのはそれからです。
すでに半数以上の猫が譲渡され現場に残るのは18頭。さらに譲渡先探しを進め、最終的には9頭のみが当事者宅に残る予定です。猫たちのストレスもずいぶん減ったことでしょう。当事者は、問題解決に多くの人の協力があったことを忘れず、残った猫たちを最期まで愛情を持ってお世話してほしいと思います。


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