52_福岡県宗像市多頭飼育救済支援レポート(行政枠)
申請No.52
申請日:2024年1月14日
申請/実施責任者:宗像市 環境部環境課
場所:福岡県宗像市
居住者:当事者本人(66歳、女、介護施設勤務)
居住環境:アパート、集合住宅
生活保護の受給状況:受給していない
多頭飼育現場の猫の総数(うち子猫の頭数):4頭(0頭)
手術日:2025年3月31日
協力病院:cat spot clinic
チケット発行数:4枚
手術頭数:4頭
協働ボランティア:個人ボランティア
申請から不妊手術完了までの経緯(報告書より)
- 市内の自宅(持ち家)で夫や子供と生活をしていたが、十数年前からは一人暮らし。自宅は手入れされず荒れ放題で、外猫への餌やりなどで地域との諍いが絶えなかった。迷い猫のポスター等を見て「うちの猫を知らないか」とその連絡先を夜間に突然訪問するといった行動もあった。
- 自宅がある地区には市に地域猫活動を申請している住民団体があるが、木々が覆っている当事者宅に集まっている猫の頭数について、この頃は把握できていなかった。
- 2年前、当事者は自宅を放置したまま急に出て行ってしまい、15頭ほどに増えていた猫たちが放置された。その猫たちは、同地区で市に地域猫活動を申請している住民団体によって対応がなされている。
- 今回、他の地区で地域猫活動をしている相談者が貼り出した迷い猫のポスターを見て、当事者が連絡をしてきたことがきっかけで多頭飼育が発覚し申請へと結びついた。
- 相談者はこれまでの事情を何も知らず、当事者の求めに応じて当事者宅を訪問。室内の悪臭に驚く。
- 1Kの狭いアパートに、前住の自宅からメス1頭だけ連れてきて子猫が3頭生まれたとのこと。そして、相談者が貼った迷い猫ポスターの猫は自分が飼っていた猫と言い張った。
- 室内は生活感がなく、布類は排泄物の酷い臭い。カーテンは猫が破くからと撤去されており、雨戸は閉めっぱなしの状態。猫用の餌皿やトイレもない。猫たちは怯えた様子ですぐに隠れてしまい、痩せているのが目立つのも気がかりだった。
- 申請に至るまでの間に相談者が中心となり、住環境と猫の飼育環境の改善を試み、地域猫活動をしている方々に物資の提供を呼びかけ、汚損した布類を撤去し取り換えて室内清掃を行った。また餌皿やトイレ、キャットフードの提供も行った。
- 当事者とコミュニケーションがとれているのは相談者くらいで、当事者は相談者に対して現在まで抵抗を示すことはなかった。
- 相談者を支えるため、相談者と行政でチームを作って問題解決にあたっていたが、行政も当事者宅で2時間ほど今回の申請および申請後の流れ、譲渡の意思確認、適正飼育についての話を行うほか、当事者の生活支援についての相談にのることができた。
- 知的な問題はないものの当事者の特異な性格傾向には、長年、地域住民や行政も難儀しており、相談者を中心にアニマルホーダーと思われる当事者を継続的に見守っていくことが必要と考えている。
- 行政は当事者と猫の生活支援が出来るよう関係部署とも連携し、相談者との情報交換に努めているが、4頭とも不妊手術ができておらず、当事者がオスを突然に連れ帰る可能性も否定できないことから申請を決定した。
- 手術前に急変した母猫の緊急保護を当事者が求めてきたことに続き、残りの3頭(子ども)についても、健康チェックや栄養状態の改善を目的としてボランティアが預かることになった。母猫は体重1.5㎏、重度の貧血で2回輸血、3週間ほど入院治療をして改善。
- 治療中の猫の返還を一方的に訴えるなど、行政やボランティアとの話し合いができない状況となったが、時間をおいて少しずつ話を重ね、何とか不妊手術を行うことができた。4頭とも無事に不妊手術が完了している。
- 長年、トイレのない暮らしをしていたせいか預かって2か月を経過するもトイレ使用ができないでいる。子どもの猫たちは、キャットフードを食べすぎて下痢・嘔吐をすることが多かったが、給餌量をコントロールして体調は改善している。
- 現在、4頭の猫は引き続き個人ボランティアが預かっている状態。当事者宅で飼育できる頭数は1頭と判断しており、自宅に戻す猫については、ボランティアもしくは行政職員が経過を見ていく体制が必要と考えている。
- また、当事者の住環境や収入、健康面の不安もあり、他部署とも協議しながら猫の戻し方について話し合いを持つ必要がある。所有権の放棄も含めて当事者と話し合いながら、譲渡などを検討していきたい。
手術日 | オス | メス | 耳カットのみ | 計 |
---|---|---|---|---|
3月31日 | 0 | 4 | 0 | 4 |
計 | 0 | 4 | 0 | 4 |
【現場写真(支援前)】


今回の取り組みを振り返り、改善すべき点や今後の配慮事項(報告書より)
猫たちの命が守れたこと、不妊手術が完了したことには満足しているが、今後の当事者との交渉が多く残されている。一部の猫の所有権を放棄してもらうこと、戻した猫の見守りを続けさせてもらうことを当事者に根気強くお願いしなければならない。
どうぶつ基金スタッフコメント
個人ボランティアが4頭の猫の預かりを継続しており、衛生的な環境で体調面の不安もなく過ごしているようです。
頭数は少ないものの対応困難な本件に関わってきた行政と、相談者をはじめとする個人ボランティアのご苦労はいかばかりかとお察しします。当事者とコミュニケーションを取り続け、支援前から4頭の猫を預かっての体調回復、不妊手術の実施、支援後の預かり継続と、粘り強く対応された皆様には感謝と敬意しかありません。そのおかげで、4頭の猫は地獄のような環境から抜け出すきっかけを得ることができました。
ただ、行政からの報告にもあるように、不妊手術は完了したものの本件は予断を許さない状況です。これまでの経緯や当事者の行動から今後の交渉は困難を極めると思われますが、ワンチームの対応で完全解決に向かうことを願っています。