53_鹿児島県阿久根市多頭飼育救済支援レポート(行政枠)
申請No.53
申請日:2025年1月22日
申請/実施責任者:阿久根市 環境水産課
場所:鹿児島県阿久根市
居住者:当事者本人(78歳 女 無職)
居住環境:持ち家/一戸建て
生活保護の受給状況:受給していない
多頭飼育現場の猫の総数(うち子猫の頭数):30頭(0頭)
手術日:2月27日、21日、3月25日
協力病院:くすのき動物病院
チケット発行数:30枚
手術頭数:30頭
協働ボランティア:アニマルホスピス協会
申請から不妊手術完了までの経緯(報告書より)
- 当事者と猫との関わりは40年前からである。当時、近隣に虐待をする人がいて、しっぽや足が切られた猫や針金が付けられた猫を見かけるようになり「お腹が減っていなければ人に悪さをしなくなる」との考えから自宅前で餌を与え始めた。
- はじめは3頭だったが、自宅前で餌を与え始めたことから他の猫も居着くようになり、不妊手術をしていなかったことから繁殖し、飼い始めてから2年以内で15頭を超えていた。
- 猫が増え始めると当事者宅前で頻繁に猫が捨てられたり、近隣の独居老人が亡くなった後に飼われていた猫が来るようになったり、当事者の行動のみではなく、第三者の行為も重なって多頭飼育状態に陥った。
- 近隣住民から市内のボランティア団体に情報提供があり、そのボランティア団体から市に連絡が入り発覚。当事者曰く、数十年前にも近隣住民から市に苦情があり指導を受けたとのことであったが記録には残っていなかった。
- ボランティアから連絡を受けた日に当事者宅を訪問。多頭飼育状態に陥った経緯を聞き取り、全頭に不妊手術をして頭数を増やさず減らしていかなければ根本的解決が図れないこと、近隣住民の生活環境を損なわないよう糞を回収すること、トイレを増設することを指導した。
- しかし、頭数が30頭と多く、当事者は年金収入のみであり貯蓄もない。日々の餌代は食費や生活費を削って年金の中から捻出しているが、不妊手術費用を賄うことは困難である。
- 自治会長への聞き取りでは、猫が多く近隣住民の生活環境の悪化や自動車での事故につながる懸念があり、早期の改善を要望していた。ボランティア団体と現場を確認し、早期に対応しなければ更なる悪循環を招くと判断したことから多頭飼育救済の申請を決定。
- チケットによって全頭の不妊手術が完了。当事者の話では、手術後オス猫の性格が穏やかになったとのことであった。猫は普段から外で飼われており自由に運動できているため、特段状態が悪い猫が見受けられなかった。
- 支援前はトイレの数が少なく、周辺の生活環境に影響を与えるほど糞尿の臭いがしていたが、新たにトイレを複数設置して計5個となった。当事者は、毎日糞を拾うようになり衛生環境の改善が見られた。猫を相性の良いグループに分けて、最低限でも「グループ数+1」のトイレを設置するよう指導しているが、餌代の負担などもあり少ない年金の中で早期の実現は難しい。少しずつではあるがこれから増やしていくとの意向を確認したため、フォローアップしていく。
- 当事者は自身の持ち家であるため、引き続き居住する。猫も引き続き当事者と同じ場所に住み続ける。
手術日 | オス | メス | 耳カットのみ | 計 |
---|---|---|---|---|
2月7日 | 7 | 3 | 0 | 10 |
2月21日 | 2 | 8 | 0 | 10 |
3月25日 | 7 | 3 | 0 | 10 |
計 | 16 | 14 | 0 | 30 |


今回の取り組みを振り返り、改善すべき点や今後の配慮事項(報告書より)
全頭を手術することができ、満足のいく結果となった。ボランティアとともに市の担当職員も自治会長や地域住民への説明に回って理解を得ることができ、感謝の言葉を多くいただいた。
当事者が多頭飼育に陥った理由の一つに、当事者宅前に猫を遺棄する人間が多数いたということがあったことから、行政の立場として、さらに動物愛護に関する広報・啓発を行っていく必要性を感じた。
どうぶつ基金スタッフコメント
現場の猫30頭はすべて手術済みとなりました。記録は残っていないものの、数十年前に近隣で苦情が出たことから指導を受けたとの話もあり、数十年にわたる多頭飼育崩壊が解決に向けて動き始めたと言えます。行政やボランティアの事前の対応によって、今回の支援は自治会や近隣の理解も得られているようです。当事者も周辺の清掃をするなど努力しており、どうか地域の中で当事者と猫を温かく見守っていただけたらと思います。
行政の報告にもありますが、許せないのは当事者宅に猫が多くいることを知って遺棄する人間の存在です。当事者宅の今後の猫の増減に注意するとともに、このようなことが二度と起こらないよう地域の目で監視いただき、見つけた場合には厳しく対処することが今回の支援を無駄にしないことにつながります。