59_東京都中野区多頭飼育救済支援レポート(行政枠)

申請No.59
申請日:2022年12月22日
申請/実施責任者:東京都中野区 健康福祉部生活衛生課
場所:東京都中野区
居住者:当事者本人(45歳、女性、無職)
居住環境:貸家/アパート
生活保護の受給状況:受給している
多頭飼育現場の猫の総数:36頭(当初58頭との申請だったが実際は36頭。詳細は経緯を参照のこと)
手術日:2月1日、2日
協力病院:ヒナギク動物病院
チケット発行数:52枚(当初の総数58頭から手術済み6頭を除く52頭分を申請)
手術頭数:36頭
協働ボランティア:南中野地域ねこの会

申請から不妊手術完了までの経緯(報告書より)

  1. 24~25年前に野良猫や捨て猫を3頭保護した。
  2. いつからか当事者宅前に猫が捨てられるようになり、4年前には29頭ほどに頭数が増えた。
  3. 空き部屋になった隣室に移り、当事者が入居していた部屋には当事者のパートナーが入居。その後、地域の野良猫などを保護しているうちに2部屋で58頭までに増えた。
  4. 発覚のきっかけはボランティアからの情報提供。当事者から「逃げた猫の捕獲を手伝ってほしい」と相談を受け、その際にボランティアが当事者を何とか説得して猫の不妊手術を実施。手術済みの猫を引き渡しに行ったところ、玄関前で異臭を感じ、話し合いの末、了承を得て入室したところ多頭飼育崩壊状態であることが判明。
  5. 劣悪な環境であったため、ボランティアが保健所に相談。保健所職員が状況確認に訪れたところ、隣室にも猫がたくさんいると当事者から報告を受けた。
  6. 当事者の経済状況や精神的に不安定な状態であることを考えると、当事者自身が手術費用を捻出して対応することは非常に困難であるため申請を決定した。
  7. 、当事者は58頭全頭が自分の猫と主張していたが、支援当日になって手術予定52頭のうち16頭について隣室のパートナーの猫であったことが判明。当事者の猫のみを手術対象とすべきであったが、チケットによって52頭すべての不妊手術が行われてしまった。※本件の対応については下記「スタッフコメント」を参照。
  8. 手術を受けた当事者の猫36頭のうち1頭が術後に亡くなった。残る35頭の猫はすべて現場に戻り、当事者が飼養を継続する。ボランティアによって部屋の清掃や不用品の処分が行われたことで猫の活動スペースが確保され、臭いも支援前より改善されている。栄養状態がよくない猫が数頭いたが、ボランティアが投薬などをしており、少しづつ回復している。
  9. ボランティア団体が月1回程度訪問し、部屋の状態や飼育状況の確認、猫砂や餌の支給、猫の体調管理などを継続して行っている。
  10. 今後は担当部署である生活援護課に引き継ぐが、管理会社から飼養頭数を減らすような依頼や強制撤去が発生するような事態が生じた場合は、生活衛生課に連絡するよう依頼し情報共有していく予定。
手術日 オス メス 耳カットのみ
2月1日 6 9 3 18
2月2日 8 9 1 18
14 18 4 36

【現場写真(支援前)】

【現場写真(支援後)】

今回の取り組みを振り返り、改善すべき点や今後の配慮事項(報告書より)
担当として初めて多頭飼育崩壊現場に直面した。
環境省のガイドラインなどを頼りに対応したが、行政として他の関連部署との連携が密でないため保健所のみが対応することとなり、今後は連携の強化を図ることが急務であると感じた。当事者への対応、どうぶつ基金への申請など慣れない業務が多く、協働するボランティア団体やどうぶつ基金にはいろいとと迷惑をかけてしまった。


どうぶつ基金スタッフコメント
1頭が亡くなってしまったことは大変残念ですが、残る35頭は不妊手術を乗り越え、今後も当事者宅で暮らすことになりました。もう繁殖することはありません。当事者は亡くなった1頭の分までしっかりと愛情を注いで、35頭の猫を最期までしっかりお世話してほしいと思います。ボランティアも継続して関わっているようですが、行政も関係各所で連携を取りながらフォローしていってほしいと思います。
本件では、頭数の誤認と当事者の飼い猫ではない猫へのチケット使用が発生しました。当事者が精神的に不安定であることも頭数誤認の原因の一つではありますが、手術前にパートナーの猫が含まれていることが判明した以上、そこで対象外とすべきでした。多くの行政が多頭飼育崩壊への対応に慣れておらず、そのなかですべてを把握し対応するのは、とても大変でご苦労も多いと思います。しかしながら、多頭飼育救済支援は行政が主導してこそ本来の解決に向かいます。だから、失敗があっても、うまくいかなくても、積極的に関与してください。どうぶつ基金の多頭飼育救済支援も、皆様の失敗や反省を糧にアップデートし、ともに解決に向けて歩んでいきたいと思います。

※本件に対して発行した52枚の無料不妊手術チケットのうち、16枚が支援対象ではない猫(隣室のパートナーの猫)に使用されていました。事務局で対応を検討した結果、今回この16頭分についてはチケットが流用されたと判断し、16頭分の費用を返金していただきました。


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