40_兵庫県尼崎市犬多頭飼育救済支援レポート(行政枠)

申請No.40
申請日:2021年9月27日
申請/実施責任者:尼崎市動物愛護センター
場所:兵庫県尼崎市
居住者: 当事者本人(61歳、男、無職)
居住環境:持ち家/戸建て
生活保護の受給状況:受給していない
多頭飼育現場の犬の総数:12頭(うち1頭は手術済み)
手術日:10月18日
協力病院:どうぶつ基金病院(大阪)
チケット発行数:11枚
手術頭数:11頭

申請から不妊手術完了までの経緯(行政報告書より)

  1. 8年前に動物愛護団体(個人)より1頭の雑種(メス、避妊済み)を譲り受けたが、3ヶ月後に逸走させてしまう。その犬が帰ってこなかったため、同一団体より更に3頭(オス2頭、避妊済みのメス1頭)を譲り受けた。
  2. 同時期に別の動物愛護団体(個人)からも1頭の雑種(メス、未手術)を譲り受ける。さらに、最初に逸走して行方不明だったメスの雑種犬が保護施設により捕獲されたことから、その犬の返還も受けて合計5頭の犬を飼養する結果となった。
  3. その後、未手術の犬が同居しているにもかかわらず、オス犬には運動失調障害があることから交尾をしないという先入観により、当事者が不妊手術を怠った結果、3年前に3頭の子犬が生まれ8頭となる。
  4. これらの子犬から繁殖に歯止めが利かなくなり、不妊手術の必要性を感じながらも、何も対処することなく多頭飼育状態に陥った。
  5. 多頭飼育は発覚したのは1年前である。地域包括支援センターより「近所で犬を複数飼育している人物がいるので確認してほしい」との依頼があり、センターが現地確認を行ったところ8頭の犬を確認。
  6. 繁殖制限措置(不妊手術、手術完了までの雌雄の住み分け)、犬の登録および狂犬病の注射を行うよう行政指導を行ったが、その後は当事者と接点なく現状に至る。
  7. 2021年9月上旬、新たに警察から「当事者宅から度々犬が逸走しており、確認したところ相当数の犬がいるようだ」との情報が入る。
  8. 立ち入り調査により18頭の犬を確認。以前の訪問時に比べて飼育環境は明らかに悪化しており、行政指導不履行について再度同様の内容で文書指導。
  9. 2021年9月下旬、1歳未満の個体6頭を所有権放棄によりセンターが引き取り、残った個体について再度狂犬病予防法に基づく指導を行った。
  10. 当事者は、度重なる犬の逸走、繁殖制限、犬の登録および狂犬病予防注射不履行について指導を受けたにも関わらず一切対応していない。指導後も繰り返し犬を繁殖させ、著しく危機感を欠いている。
  11. 当事者は新型コロナの影響で1年前に失職し、現在は通常の生活を送るのも苦しい状況で、生活保護の受給を検討中。
  12. 立入調査時は18頭、9月下旬にセンターが6頭を引き取り現場に残る犬は12頭。うち1頭は手術済みだが、残り11頭の不妊手術を早急に行う必要があり、どうぶつ基金の多頭飼育救済の申請を決定した。
  13. 支援後、当事者には室内の清掃をこまめに行うようになった様子が伺え、悪臭も改善傾向がみられるが、依然として物が多く、今後も継続した指導が必要であると感じる。
  14. 11頭の術後の健康状態は良好だが、犬同士の抗争がまだ続いているとのこと。犬のケガを防止するため、相性の悪い個体を極力接触させないよう、敷地内でロングリードで繋ぐ等の対策をしている。給餌状況は現時点で満たされている様子で、空腹を訴えるような個体は見受けられない。
  15. 当事者が飼養を継続するが、譲渡適性のありそうな個体(5頭程度)については順次センターが引き取り、里親募集を行う予定である。
手術日 オス メス 耳カットのみ
10月18日 6 5 0 11
6 5 0 11

【現場写真(支援前)】

【現場写真(支援後)】

今回の取り組みを振り返り、改善すべき点や今後の配慮事項(行政報告書より)
当事者はこれまで、経済難を理由に手術や狂犬病予防法に基づく登録及び注射を怠り、多頭飼育状態に陥った。
これ以上の繁殖を防止することを最優先し、どうぶつ基金の支援を受けて無償で手術提供するも、結果として現場に残された犬の登録および狂犬病予防注射が不完全な状態が続いている。
多頭飼育者には所有者責務の観点を十分自覚させたうえで、案件の解決に向けて取り組むことが最重要と考えており、違法状態が続いている本件においては自己評価点60点が妥当と考える。
当事者に対しては、引き続き重点的に指導を継続していく必要がある。


どうぶつ基金スタッフコメント
どのような結果にも必ず原因があります。
飼い主としての自覚のなさ、犬の繁殖行動に関する思い込み、行政指導に対応しなかったことなど、当事者にも当然大きな責任があります。しかし、行政からの報告書を見ると、8年前の犬の譲渡の状況にこそ原因があったのではないかと感じます。
譲渡した犬を逸走させた当事者に対して同一団体が新しく3頭を譲渡、別の団体がさらに1頭を譲渡しています。どちらも個人が団体を名乗っていたようですが、通常では考えられません。この段階で飼育環境の確認がきちんと行われていれば、当事者にも団体にも命の受け渡しをしているという自覚があれば、このような結果には至らなかったのではないでしょうか。
また、1年前に問題の多い多頭飼育であることを把握していながら、継続して指導を行ってこなかった行政にも責任の一端はあります。ここで歯止めがかけられていたらと残念でなりません。
12頭の犬は現在も現場で当事者と生活していますが、当事者には猛省を求めるとともに、残された犬たちの飼育環境をさらに整え、最後まで愛情を持って飼育することを求めます。行政には当事者への指導を継続するとともに、犬たちの幸せに繋がる譲渡先を見つけていただきたいと思います。


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