【海外の動物事情レポート】第4回 番外編

こんにちは
どうぶつ基金事務局です。

本日は、昨年お届けしました「アジアの動物事情レポート」シリーズより、
第4回の番外編をお届けします!

アジアの獣医師事情や動物を取り巻く環境についてレポート
してくださった、獣医師として動物愛護に取り組む藤田舞香先生。

今回は訪問先のドイツでの動物事情についてお話いただきました。

ヨーロッパ最大級の動物シェルターの見学から見えてくる動物事情、
ぜひご一読ください!

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第4回 海外の動物事情レポート ―ドイツ編―

皆さまこんにちは、獣医師の藤田舞香です。過去3回に渡りアジアの動物
事情についてお届けしてきましたが、今回は番外編として、動物愛護先進国
と言われているドイツを訪問した際の経験をご紹介したいと思います。

ドイツには“動物の家”を意味するティアハイム(Tierheim)と呼ばれる
動物シェルターが多数あります。その中でもヨーロッパ最大級と
言われているのが、首都ベルリンにある「ティアハイムベルリン」です。
この施設は非常に有名なので見学希望者が多く、定期的に見学ツアーが
行われていますので、この度参加してきました。


ティアハイムベルリンの入り口

サッカー場約22面分もある広大な敷地の中に、6つの犬シェルター、
4つの猫シェルター、小動物シェルター、鳥シェルター、爬虫類シェルター、
亀の池、大型動物用の動物福祉農場、動物墓地、ドッグラン、トレーニング
センター、獣医療施設等があり、収容動物数は約1,300頭もいるそうです。
年間約17億円とも言われる運営資金のほとんどが寄付金で賄われており、
8名の獣医師を含む、約180名の従業員と約300名のボランティアにより
管理されています。

ティアハイムでは、「ここは動物達の本当の家ではなく、本当の家を
見つけるまでの間、安心して快適に過ごせる場所を提供する」という考え
のもと、動物たちを一時的に受け入れ、必要な検査や治療、健康管理等を
しながら、譲渡を行っています。

ティアハイムでは基本的に殺処分はしてはならないとの指針を定めて
いますが、同時に、治る見込みのない疾患による苦しみが非常に強いと
獣医師が判断した場合には安楽死することが必須、とも定めています。

施設には毎日10~20件の動物受け入れの問い合わせがあり、飼育困難と
なった飼い主からの持ち込みの他、飼い主不明の保護動物が警察から
持ち込まれることもあるそうです。これだけ多くの動物を受け入れて
いても、譲渡率も非常に高いため、収容数を保つことができています。

譲渡にあたっては飼育環境に関する審査があり、8時間以上の留守番が
ある場合や、家族に一人でも動物嫌いの人がいる場合には譲り受けることは
できません。通常、同居する家族と犬全員で施設を訪問してもらい、相談
しながら譲渡契約を進めていきます。特に犬の場合は難しい性格の子も
多いため、何度も通って扱い方を学んでからの譲渡となることもあります。

譲渡が決まった場合でも、2週間のトライアル期間中に問題が発生した場合
には、譲渡を取りやめ、施設側が必ず引き取ることが約束されています。
譲渡を推進しながらも、決して動物が不幸になることのないように対策
されているんですね。

譲渡の際、飼い主は施設側に手数料を支払います。基本的に譲渡動物が若い
ほど金額が高く、疾患があったり高齢であるほど安く設定されています。
この手数料は施設運営に充てられるほか、衝動的な契約を防ぐ狙いもあります。
譲渡を受けることができない事情がある方には、動物の生涯にわたり経済的
にサポートする「パーテ」という仕組みもあります。また、死後の財産を
施設に託す方もいらっしゃり、そのお名前は施設に刻印されています。

敷地内で特に賑わっていたのは、猫シェルターでした。
自由生活期間の長かった猫や人慣れしていない猫は、網を張った広い庭に
自由に出入りできる屋外メインのシェルターで、人とのふれあいが可能な
猫たちは、個室ごとに屋外テラスがついた屋内メインのシェルターで
暮らしていました。私が訪れたのは寒い雪の日でしたが、意外にも自ら
外を選んで寝ている猫もいました。


猫シェルターの庭にはキャットウォークやハウスが設置されている

屋内シェルターでは、各個室に置かれた可愛らしい猫ハウスやキャット
タワーでくつろぐ猫たちを見ることができ、動物収容施設というよりは、
見ているだけでも楽しい一つのエンターテイメントのような空間で
賑わっていました。


屋内猫シェルターの様子 多くの人で賑わっている


各個室には出入り自由のテラスがついている

シェルター自体に集客力があることは、譲渡数を増やすきっかけになり
ますし、毎日いろいろな人が来る環境に慣れることで猫たちの社会化にも
好影響を与え、譲渡率も高まる相乗効果になっているように感じました。
実際猫たちはみんな人懐こく、自らガラス越しに近づいてきて見学者に
興味を持っているような様子でした。

ガラス扉に少し隙間があいている構造のため、猫は相手のにおいの情報を
得ることができ、怖がることなく接することができているようでした。
このように、各動物種ごとにシェルターを分けて管理するのはもちろんの
こと、各個体の性格や本来の生態に合わせて生活環境を整える努力が感じ
られました。また、シェルター内は動物たちの入れ替わりが多いため、
清掃消毒の際は必ず手袋を装着したり、ケージごとにボウルや道具を分ける
など感染症管理が徹底されていました。


小動物シェルターの様子 各部屋に掃除道具が用意されている

動物保護自体だけでなく教育や啓蒙にも力を入れているようでした。
ツアーの参加者には、小学生のお子さんを連れた親子、大学の課外学習で
来ていた学生さん、シェルターの練られた建築に興味があったという
建築士の方などがいらしていて、一般市民にとって動物シェルターは
ごく身近なものなのだろうと感じました。

さて、「犬天国」とも言われるドイツですが、まさにその通り、公共交通
機関やカフェなど様々な場所で犬を連れた方を見かけます。ただ犬が好き
勝手に生活しているのではなく、犬も社会の一員として存在している、
といった印象でした。

こうした社会が安全に成り立つ背景には、しつけの徹底と市民の教育が
根付いているようです。多くの犬が子犬のころからしつけ教室に通い、
飼い主も犬との接し方を勉強します。また、子ども達は学校で犬のシグナル
等を学び、街で犬と出くわしても自分の身を守れるように育っていきます。

トレーニングが行き届いているためどの犬も落ち着いていて、ノーリード
でお散歩する姿も見られます。その結果犬のストレスも少なく、
問題行動が起こりにくいという好循環が生まれているようです。


電車内で出会ったわんちゃん とても静かでいい子でした

犬の飼い主には犬税が課せられ、1頭目は120ユーロ、2頭目以降は
180ユーロ、危険犬種ではさらに高額となります。
ドイツには生体展示販売自体を禁止する法律はありませんが、飼育に関わる
様々な規則が具体的な数値で厳しく定められているため、実際にはビジネス
として成り立ちにくく、犬猫の生体展示販売はほとんどないそうです。
基本的には、ブリーダーから直接購入するか、保護施設からの譲渡となります。
また、飼育に関わる規則は一般の飼い主にも適応されます。このように、
犬を飼い始めることのハードルが高いからこそ、飼い主の責任感も
強い傾向にあるように感じます。

日本との違いとして最も印象的だったのは、ペットは家族という感覚は
同じであっても、あくまで人とは異なる動物種として見ているということ
でした。日本では、服を着せたり、カートに乗せたり、お誕生日には
犬用ケーキを食べたり、というように、犬を人間の子どもと同じように
扱うことで愛情を注ぐことが多いように思いますが、ドイツでは、犬は
床に座ってドッグフードを食べているのが普通で、膝に乗せていると、
具合が悪いのかと心配されることもあるそうです。

このドイツ式の犬との接し方は、一見淡白なようにも見えますが、犬が
犬らしくいることを尊重する、犬という動物種へのリスペクトであり、
人と犬が平等に共生できている社会とも言えるかと思います。

藤田舞香
プロフィール
小動物臨床獣医師
都内の動物病院、全国各地の動物保護施設で診察や手術を担当
個人ボランティアとして地域猫のTNR活動にも携わる
2020年出雲市犬多頭飼育崩壊救済、2021年地域集中プロジェクト筑後
にボランティア参加
シンガポールの猫専門病院、動物保護施設勤務を経て、
ムンバイ(インド)の一般動物病院に勤務
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