【ちきゅう部だより】第5回 コンゴ人にとっての野生生物とペット事情(地方と都会)

こんにちは
どうぶつ基金事務局です。

本日は「ちきゅう部だより」コンゴからのシリーズ・第5弾をお届けします!

長年コンゴ共和国に住んでゾウと人間の共存問題に取り組まれている
萩原幹子さんから届くお話。

今回はコンゴにおいて野生動物やペットとどういう関わりなのか、
といった実情を知ることができます。

日本では野生動物と言えば人間の生活とは遠く離れたもの、
ペットと言えば人間の生活とともにある、身近な存在です。

読み進めていくと、文化や生活が異なる風景を垣間見ることができます。
ぜひご一読ください。

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第5回 コンゴ人にとっての野生生物とペット事情(地方と都会)

前回まで国立公園周辺の村で起きていることを書きました。
今回はコンゴ人にとって野生生物はどういう存在なのか、そしてみなさんにとって
身近な、ペットはアフリカではどのような存在なのか、コンゴの例をご紹介します。

アフリカだし、自然は多いし、野生動物もたくさんいるだろうな、とご想像
されることでしょう。確かに日本人よりは、コンゴ人にとって野生生物は
身近な存在かもしれません。ただし「食べ物」という意味においてです。

私は首都から45キロ郊外の村に14年住んでいますが、かつては近くの森に
狩猟に行く人がいて、獣肉もたまに売り歩いていました。都会から少し離れた
だけで、ブルーダイカーやアンテロープなどが狩猟できたのです。
最近は村から25キロ離れたところに特別経済地区として工場が建てられ、
舗装道路が敷かれ、車の往来も増えたせいで、野生動物を捕まえにくくなったり
生息地が減ってしまったのか、あるいは一時期大量に土木工事に労働者としての
雇用があって以来、ハンターとして生計を立てる人もいなくなったのか、または
都会から冷凍食品も運び込まれて手軽に食料が買えるようになったためか、
野生動物の肉は遠い地方から運ばれてくるものだけになりました。

右がブルーダイカー、左がヤマアラシ、食用に狩猟されたもの

コンゴには森林地帯と草原地帯がありますが、多くの動物は主に森に
棲んでいます。私がマルミミゾウの仕事で行っている村のように、魚釣りが
いつでもできる川が無く、たんぱく源は森の動物の肉に頼っているようなところでは、
野生動物は鑑賞するものでも飼ってかわいがるものでもありません。
食べられるか否か、おいしいか否か、捕まえられるか否かです。そこに
動物の種によっては、男性しか食べないとか、毛皮やしっぽを呪術に使うとか、
伝統的な意味があることもあります。狩猟は銃、罠、網で行われ、主に村の中での
消費用です。また国立公園周辺では道路の途中にコントロールポイントがあり、
持ち出しは村から出る人が自宅で食べる程度だけが認められています。
販売用に大量に持ち出すことは禁止されていて没収されてしまいます。

世界でアマゾンに次ぐ流域面積と流量のコンゴ川がありますので、
支流もたくさんあり、ワニや淡水カメも食べられています。

そんな野生動物も、首都圏に持ち出されると高価なグルメ食になります。
都会に出た肉は値段が倍以上になります。一般家庭で日常的には食べられておらず、
レストランでもたまに見かける程度です。
ブッシュミートの「名産地」的な地方へ出張に出ると、買って帰る人たちも
多くいます(北海道といえば海鮮物、のようなものです)。

原産地ではこのように生で、都会に持ち出される肉の多くは燻製にされて売られます

地方に住んでいる人でも、野生動物の生きた姿を見るのは狩猟に森に入る人たちぐらいで、
狩猟され運び出された姿を見ることのほうが一般的です。私が行くンボモ村でも
近年でこそゾウが村の周辺に出てくるようになって、村人たちもゾウを見ることに
なりましたが、最初に行った2004年当時はゾウを見たことのある村人はほとんど
いませんでした。これが人間と野生動物との本来の距離です。お互いに邪魔をせず、
比較的近いところに住んでいるので、人間が少し森の恵みをいただく、という関係です。

ではペット事情に移りましょう。コンゴではペットで一般的なのは、犬と猫です。
といっても犬は番犬として、ネコはネズミ退治係として飼われています。

特にコンゴ人は犬を非常に怖がるので、人間の警備員よりも泥棒対策に役に立ちます。
コンゴ人たちはいかに飼っている犬が怖い番犬になるかを重視していて、昼間なるべく
飼い主以外の人間と接触させないように、ケージの中に入れておき、夜に敷地内に
放します。塀に囲われていない敷地の場合、終日犬を鎖につなぎっぱなしにしている人も
います。ジャーマン・シェパードなど、いわゆる血統種か血統種の混じった雑種の
中型・大型犬が人気があり、それ以外に「バテケ犬」といってローカルの
やや小型の犬もいます(バセンジーという犬種のオリジンかもしれません)。

「猛犬注意」のプレートではなく、こうやって犬の絵を描いていることが多いです

柴犬ぐらいかやや大きいバテケ犬(右下のように耳が傷んでいる犬が多いです)

私も犬を昔から飼っているのですが、2年前に泥棒が入ってからは、
「犬がいるので」と言って初めての見知らぬ人をむやみに敷地内に入れないことに
しました。そのせいか、あるいはそれが本来の姿か、犬たちはとてもワイルドで、
みなにかわいがってもらうものではありません。うちで飼っていた、
去年亡くなったメスはロットワイラーの血が入っていて特に凶暴で、家畜のヤギや
ニワトリ、うちで飼っていたウサギや子猫を殺してしまいますし、敷地の扉を
開けたときたまたま通りがかっていた近所の雌犬にダッシュで襲いかかりに行きました。
うちの犬だけでなく、近所でうろついている犬(飼い主がいるかどうか不明)も、
ニワトリや子犬、ネコなどを夜に襲って殺してしまいます。

うちで飼っていた犬2匹、昨年夫婦ともにこの世を去りました。左が凶暴なメス「ナミ」

世代交代して現在飼っている、左から父犬(マリノア)、母犬(ピットブル入り雑種)、息子

ネコはネズミ退治が仕事なので、食料品店などでもよく飼われています。
おそらくすべてのネコが雑種と言っていいと思います。日本のように室内飼いでは
ないので、自由に出歩き、ときに人間に殺されてしまうこともあります。
私がコンゴで最初にネコを飼った当時は首都に住んでいて、向かいのコンゴ民主共和国
から来た移民のコンゴ人たちがネコを食べるということで、ちょっと塀の外に出ただけで
捕まえられ、戻ってきませんでした。村に移り住んでからも、うちで母ネコが出産して
飼っていたネコが何匹も行方不明になってしまいました。そういう環境のためか、
長生きしているネコに会うことはまずありません。うちで最も長生きして7歳でした。

うちで長生きしたほうのネコ夫婦、昨年2匹とも居なくなってしまいました

ネズミ退治の使命があるので、うちで生まれた子猫たちもみなもらわれていきました

都会には獣医さんがいます。農畜水産省の建物の脇に、国の経営する動物病院が
あります(畜産の枠内だそうです)。そこへ動物を連れて行けば、ワクチン接種や
ケガの治療をしてもらえます。そのほかにもプライベートな動物病院や、病院を
構えずに出張サービスで治療をする獣医もいます。うちのかかりつけの獣医さんは
国家公務員の獣医なので、地方の家畜の牛を見に行ったりしていましたが、
副業で犬猫も呼べば治療に来てくれています。去勢手術もできます。

うちの獣医さんの広告を作ってあげてフェースブックで宣伝しました

ただし残念なことに、ペットが内科系の病気になっても日本のような検査機器は
無いので、できることといえば抗生物質や痛み止めの注射をするのみです。
私が飼っていた前述の大型犬のメスに腫瘍のようなものができていたのですが、
コンゴには根本治療は無いので、症状がひどくなったら安楽死させるしかないと
言われました。奇跡的に彼女は腫瘍ができては消えていって11年生き、
いよいよ辛そうになって息が荒くなったので獣医さんを呼んでせめて鎮静剤を
打ってもらおうと思っていたら、電話する前に息を引き取りました。

コンゴでは動物が亡くなったらどこにでも穴を掘って埋めて構いません。
また、動物愛護に関する法律は無いそうで、飼い主が餌を与えていなかろうが、
劣悪なコンディションで飼っていようが、飼い主が法的に責められることは
ありません。ただし飼っている犬が誰かを咬んでしまった場合は、
飼い主の責任だという規則はあるそうです。

コンゴ人のペットに対する態度は、動物好きな人もいますし、しょせん動物と
見下す人もいます。子どもたちが子犬をかわいがっているほほえましい光景は
町でも田舎でも見かけます。が、うちの訪問者を見ていると、犬もネコも怖がる
人たちもたくさんいます。森の中の村では犬は狩猟犬、またボディガードとして
人間と一緒に森に行く、大事なお供なので、ちゃんと人間が食べるものを分け与え
られたりしています。決して猫かわいがりしているわけではないので、耳が
吸血ハエにたかられて出血して大きな傷になってしまっている犬もたくさんいます。
村では逆に臆病なローカル犬も多く、私が近づくと逃げたりする犬もいます。
おそらく狩猟に行くと動物に対して野生の血で頑張るのでしょうが、人間は
飼い主ですら蹴ったりするので甘える対象ではないようです。反対に、うちで
生まれたネコは子猫のときから人間がかわいがるため、普通に人の膝の上に
乗って来るのですが、コンゴ人の知り合いたちに子猫を分けたあとその行動に
戸惑う人も多く笑ってしまいます。

村で食事を待っている犬:左は男の子が、お皿代わりの葉っぱにおかずと主食の
キャッサバを用意しているところ。右は狩猟犬が仕留めた獣肉の分け前を待っているところ

犬猫以外では、モルモットやウサギも飼われていますが、やはり食べる対象
としてです。緑色のきれいなインコも食用に売られています。
また、たまたま森で捕まったサルが飼われて、すっかり人間に慣れていることも
ありますが、殺されてしまったり、やはり野生動物が飼われると悲運な結果に
なることが多いです。
犬や猫はつくづく、人間と暮らすために生まれてきてくれているんだな、
と実感させられるコンゴです。

うちで飼っていたヨウム(コンゴに野生で生息しています):昨年ケージが
開いてしまい、若い犬が殺してしまいました(写真の犬は優しかったのですが)

村で飼われていたサルの赤ちゃん、やはり死んでしまったそうです

萩原幹子
プロフィール
日本で会社員をしながら野生生物保全論研究会(JWCS)など
複数のNGOのボランティアを経て退職後、
2002年イギリスのケント大学で保全生物学修士取得。
2004年から3年半、中部アフリカのコンゴ共和国オザラ国立公園で、
マルミミゾウの畑荒らし問題の調査にたずさわり、そのままコンゴ共和国在住。
現在はフリーランス・コーディネーター、JWCSのプロジェクトスタッフ。
2021年から再びオザラ国立公園でマルミミゾウの畑荒らし問題に関するプロジェクトを実施中。

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