「戦争と生きもの」

この原稿を書いているのは4月5日ですが、
現在でも、ウクライナへのロシアの武力行使は続いています。

勝ち負けではなく停戦へ

戦争というと、どっちが勝つのか負けるのか、と思う人が多いかと思いますが、
第二次世界大戦以降は、「戦争は始めちゃいけない」。
もし始めてしまったら、「勝ち負けではなく、停戦あるのみ」。

国連は、二度と人類が戦争をしないために作られました。第二次世界大戦が
あんまりひどく、核爆弾を使ってはみたけどその被害がひどすぎたので、
今度戦争になったら人類は滅亡してしまう、二度と戦争はしてはならない、
だから戦争を防ぐ機関を作ろう、といって、できたのが国連。
もっかのところ世界で一番大きな「戦争防止機関」です。

そしてロシアという国は、国連の5人いる、クラス委員のひとり、
みたいなもの。正式名称では常任理事国です。
他の人が戦争を始めないように見張る役目なのに、武力行使を始めてしまった。

ロシアはウクライナに対し、最初に始めたのはそっちでしょ、とも
言っていて、それも一理あることはあるのですが、それにしても仕返しが
爆撃と戦車の侵攻とは、大き過ぎです。常任理事国が始めてしまった
武力行使は、国連でさえ止められない、だから、国連も頼りにならない、
意味がない、という人もいます。それもこの時点ではその通りなのですが、
だからといって、国連以外のものに頼るのは、さらに危険です。

国連の戦争予防の機能をもっと高め、参加国がそれぞれ知恵をしぼり、
提案し、努力を重ね、再発防止に務め、そして何より現在のロシアと
ウクライナの武力行使を一刻も早く停戦にもっていくしかありません。

停戦は交渉なので、相手を「悪魔!」とののしっているうちは始まりません。
専門用語では「悪魔化は停戦交渉の妨げ」といいます。「停戦は悪魔と
握手すること」ともいいます。まずは停戦を成し遂げたのちに、戦争犯罪は
別口でしっかり裁いていく、心構えが必要です。ウクライナの人の
命のことを考えたら、まず停戦。一刻も早い停戦。あとは人道支援。
今はそれだけ、です。

頑張れ、戦え、負けるな、プーチンをやっつけろ、ということは
停戦のためにならないのです。ヘイトという熱狂はいつでもどこでも
「よくない」のです。

人道支援はいいけれど、武器を送るも「よくない」。
傭兵を送るのも「よくない」。

民間からも、一般市民からも、企業からも、NGOからも、個人の
アクティビストからも、停戦のイニシアチブを示していくのが大事です。

戦争犯罪を防ぐために

戦争には、攻撃していいのは戦闘員だけ、という決まりがあります。
民間人を巻き込んではなりません。民間人を巻き込んでしまった場合、
戦争犯罪になります。

今回、ウクライナのゼレンスキー大統領が市民に「武器を取れ、戦え」と
言ったことが問題になりました。大統領が市民に対し武器を持って戦え
というと、ウクライナの戦闘員と民間人の区別がなくなってしまいます。
本来であれば民間人を攻撃すると戦争犯罪です。ところが、民間人に見えるが
実は民間人ではなく、大統領の指示に従い武装した戦闘員だ、と言われる
口実を作ってしまったことにより、戦争犯罪としてカウントできなくなって
しまうかもしれないのです。

第二次世界大戦時も「戦争犯罪を裁く」ことはありましたが、そのときよりも
ぐっと範囲が拡大、専門の国際裁判所も設置され、厳密化されたのです。

戦争犯罪専門の裁判所のことを、国際刑事裁判所といいます。
2002年7月に設置され、以降起こった事件を裁いています。オランダの
ハーグにあり、日本も締約国で、財政的にも最大の拠出金を出し、
2021年には30億円を負担しています。お金だけでなく、判事や職員も
積極的に派遣しています。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000162093.pdf


たとえば広島や長崎の原爆投下も戦争犯罪です。戦争に勝ったからといって
裁かれないというのはおかしなことです。この考えは今も続いています。

民間人を戦争に巻き込むことが戦争犯罪というのなら、広島長崎の
原爆投下も戦争犯罪だよね、と思っている人が多いと思います。
そうです。それは戦争犯罪なのです。

でも、今でも原爆投下は戦争犯罪として裁かれていないのだから、
結局戦争犯罪なんていっても勝ったものがちなんでしょ、
どうせ意味ないんでしょ、ポーズだけなんでしょ、と思う人もいるかと
思います。これを「モラルの崩壊」といいます。法を免れる人を放っておくと、
罪があるのに裁れない人がいると、社会の「法治精神」が弱くなってしまい、
よくありません。

国際刑事裁判所が第二次世界大戦前にあったなら、2002年7月発効の
国際刑事裁判所ローマ規定が1945年時点であったなら、広島や長崎に
原爆を落とす命令を出したアメリカの大統領は、死ぬまで一生締約国の
警察に追いかけられ逮捕されます。

国連の基準では死刑は違法なので、最高刑は終身刑です。

でも国際刑事裁判所ができたのは2002年7月です。ここで
世界が変わった、と思ってください。第二次世界大戦の記憶を
今に当てはめると間違ってしまうのが、ここです。

2002年以降、つまりこれからは、戦争犯罪に時効はなく、
死ぬまで追いかけられるのです。

命令自体が戦争犯罪だった場合、追いかけられ、裁かれるのは、
手を下した兵士ではなく、命令した将校や将軍や大統領です。

日本は第二次世界大戦のあと、戦争放棄したので、世界の戦争から
一線を画すことができました。でも逆に、知識や考えが
そこで止まってしまった、とも言えます。

たしかに無人爆撃殺人ドローンなど、リモート兵器も開発されています。
戦争犯罪や地域紛争も引き続き発生します。増えているようにも思えます。
が、人類は、国連は、それに対抗するための法律も着々と開発しています。

大事なのは、あきらめないこと。無力感ばかりを感じないこと。
ヘイトに走らないこと。熱狂しないこと。

自分が飼っている犬や猫を大事にするように、飼っていなくても
ご近所をうろうろしている猫やさえずっている鳥を大事に思うように、
生きものの命を大事にする人は、遠い国の暴力のことにも、積極的に、
よい発言をしてください。ヘイトをいう人や熱狂している人を見かけたら、
それは停戦のためにならないよ、とひと言。

祖国のために命を捨てるとは立派だ、という人を見かけたら、
国よりもひとの命、生きものの命を大事にしましょう、捨てることは
立派ではありませんよ、とひと言。
あ、ひと言じゃないですね、みこと、ですね。
あ、ダジャレじゃないですよ。ほんとに、ひと言じゃなくても、
あたまがスーッと冷える言葉を、かけてあげてください。
それがいずれは、遠い国の人の命を守ることにもつながると思います。

文責 マエキタミヤコ

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