世界遺産 奄美・沖縄「ネコ3000匹駆除殺処分計画」中止要請書を小泉環境相、IUCNに提出 どうぶつ基金、ゴールゼロ
データ隠蔽、違法わな、絶滅危惧種致死、不正の温床「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画」即刻中止を求める要請書を17日、公益財団法人どうぶつ基金とNPO法人ゴールゼロが、小泉環境相、河野太郎行革相、塩田鹿児島県知事、ユネスコ、IUCNらに提出した。
「奄美・沖縄」の世界遺産登録は7月26日に正式決定される予定です。世界遺産は歓迎すべき事ですが、その裏側で、データ隠蔽によって策定された不正な「ネコ3000匹駆除殺処分計画」が進行中です。
2018年から10年間、奄美の猫を3000~3600匹を駆除して、5日以内に引き取り手が現れなければ殺処分するという計画です。
これまで環境省による違法ワナによって捕獲された猫たちはNPO法人ゴールゼロ(齊藤朋子代表)をはじめとするボランティアさんによって全て引き受けられ、幸いなことに1匹も殺処分は行われていませんが、環境省は今年度から予算を6015万円に大幅増額し猫の駆除領域を奄美大島全域に広げて捕獲数も増加しています。
殺処分寸前の猫を引き取る斎藤獣医師
2020年度に捕獲された猫の引き取りの90%は、県外のたった3名の女性ボランティアさんが「為政者に一匹の猫も殺させない」という必死の思いで、行ってきましたが、受け入れ限度数はひっ迫しており、今日にも1匹目の殺処分が行われてもおかしくない危機的状況です。
9万人の署名が集まった署名サイトchange.org「世界遺産を口実に、奄美や沖縄の猫を安易に殺処分しないでください!」の呼びかけ人、公益財団法人「どうぶつ基金」と「NPO法人ゴールゼロ」は、17日、旧データに基づく「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画」による3000匹の猫の駆除、殺処分の中止を求める要請書を提出しました。
公益財団法人どうぶつ基金の佐上邦久理事長(61)は「奄美でノネコ駆除がなかった2003年から2015年の12年間に、アマミノクロウサギの推定生息数は4800頭(2003年)から約4万頭(2015年)まで激増していました。しかし、環境省は2015年の推定生息数4万頭を隠蔽して、2017年にノネコ管理計画を策定しました。もし、猫の駆除無しにクロウサギが激増した2015年のデータを公表していれば3000匹の猫駆除殺処分が中心になる「ノネコ管理計画」自体が中止されていたでしょう。
旧国道に違法設置された駆除用わな
計画実施後も、環境省は 炎天下の旧国道に違法なワナを設置 したり、誤捕獲により占有した絶滅危惧種アマミトゲネズミの管理を怠り死亡させたほか、捕獲した猫の手術失敗により死亡させるなど、命の冒涜と不正の温床になっています。奄美が世界遺産になるのは歓迎すべきことだが、この猫3000匹殺処分計画はスグに中止してほしい」と話しました。
殺処分対象の奄美のねこ
為政者の不正による猫殺処分を絶対に許さない!
下記より反対署名をお願いします!
https://is.gd/jHDMVr
以下に、 要請書全文を公開します。
要請書
環境大臣 小泉進次郎 殿
行政刷新担当大臣 河野太郎殿
鹿児島県知事 塩田康一 殿
鹿児島県議会殿
奄美大島ねこ対策協議会殿(島内5市町村)
国際自然保護連合(IUCN)殿
国連教育科学文化機関(UNESCO)殿
公益財団法人どうぶつ基金 理事長 佐上邦久
NPO法人ゴールゼロ 代表 齊藤朋子
旧データに基づく「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画」による
猫の駆除の中止を求めます。
奄美大島では、2003年から2015年の12年間で、アマミノクロウサギは約10倍に増えました。生態系のバランスをとる生態系保全事業は、常に新しいデータを記録し、取り入れ、刻一刻と変化していく環境に逐一対応しながら実施するのが常です。 ところが環境省は、6年前(2015年)に得られたデータがあるのにもかかわらず、また、私たちが計画の修正や更新を再三求めているにもかかわらず、18年前(2003年)の古いデータに基づく「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画」(2018年7月~)の目標「10年間毎月30頭・合計3,600頭のネコ駆除」に固執しています。
不正の温床「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画」による猫の駆除は中止し、6年前ともはや新しくもないですが、環境省自らの調査結果に照らし合わせ、不正のない、科学的データに基づくクリアな生態系保全をおこなってください。
根拠となるデータと出典一覧
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- アマミノクロウサギの推定生息数(奄美大島)は2003年(2,000~4,800頭)から2015年(16,580~39,780頭)と12年間で10倍近くまで回復した。この間、32,000頭のマングースの駆除が行われた。マングースの根絶が、アマミノクロウサギ激増の原因。
<出典>
アマミノクロウサギの調査結果(環境省)
http://kyushu.env.go.jp/okinawa/7%E3%80%80houdouhappyou1203.pdf
「マングース、根絶へ新計画 奄美大島 駆除20年、最終段階に」南海日日新聞 2021年2月24日
https://bit.ly/3AQmIkK猫の駆除無しでクロウサギ激増
- アマミノクロウサギの推定生息数(奄美大島)は2003年(2,000~4,800頭)から2015年(16,580~39,780頭)と12年間で10倍近くまで回復した。この間、32,000頭のマングースの駆除が行われた。マングースの根絶が、アマミノクロウサギ激増の原因。
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- この12年間、「ノネコ駆除」はわずか13頭。アマミノクロウサギの生息数は10倍近くまで回復。猫が「希少種を含む在来生態系にとって新たな脅威になっている」とまでは言い難い。
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- 猫は2100年前の弥生時代には長崎県壱岐島など九州地方の島々に生息していた。南島雑話」では1850年には奄美に猫が生息していたことが記されている。猫とともに渡来した外来種であるクマネズミ、ドブネズミも生態系に組み込まれながら、現存する在来種も絶滅することなく現在も生息している。猫だけが、在来生態系を絶滅させる「新たな脅威」という指摘には無理がある。
<出典>
朝日新聞2019/04/04 sippo「日本に猫がやって来た!伝来の新事実、続々と発見」
https://sippo.asahi.com/article/12225441
- 猫は2100年前の弥生時代には長崎県壱岐島など九州地方の島々に生息していた。南島雑話」では1850年には奄美に猫が生息していたことが記されている。猫とともに渡来した外来種であるクマネズミ、ドブネズミも生態系に組み込まれながら、現存する在来種も絶滅することなく現在も生息している。猫だけが、在来生態系を絶滅させる「新たな脅威」という指摘には無理がある。
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- 奄美大島ねこ対策協議会が行ったモニタリング(2020年度)から奄美大島には約2,000頭のノラ猫が生息し、90%以上がTNR済(不妊去勢手術済み)であることが読み取れ、また今後ノラ猫の数は急速に減少することが推定される。森に侵入する猫の数も、これまでよりも著しく(90%以上)減少することが予想される。将来、猫が在来生態系を絶滅させる「新たな脅威」となることは考えにくい。
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- 奄美大島ねこ対策協議会が行ったモニタリング(2020年度)によると奄美市には約935頭(奄美全体では2,586頭)のノラ猫が生息し90%以上がtnr済(不妊去勢手術済み)。
<出典>
モニタリング実施割合及び地区における避妊去勢率等(奄美5市町村モニタリング2020)
※ノラネコ外飼いネコの推定総数2586頭は下記モニタリング結果よりどうぶつ基金が算出した。
モニタリング実施割合及び地区における避妊去勢率等
- 奄美大島ねこ対策協議会が行ったモニタリング(2020年度)によると奄美市には約935頭(奄美全体では2,586頭)のノラ猫が生息し90%以上がtnr済(不妊去勢手術済み)。
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- 奄美大島ねこ対策協議会が2015年に行った調査によると奄美市のノラ猫推定生息数は7,000頭(奄美全体では5,000~10,000頭)。
<出典>
奄美大島ねこ対策協議会からの回答書
https://www.doubutukikin.or.jp/wp-content/uploads/2019/01/2f9bf7fc46ff7cb52e0cb7323d434f17-1.pdf
- 奄美大島ねこ対策協議会が2015年に行った調査によると奄美市のノラ猫推定生息数は7,000頭(奄美全体では5,000~10,000頭)。
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- 2015年度から5年間で奄美大島のノラ猫の数はTNRにより5分の1まで減少。
- 2015年度から5年間で奄美大島のノラ猫の数はTNRにより5分の1まで減少。
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- 2020年度ノネコ捕獲21頭、ノネコ以外のネコ6頭(※譲渡認定人NPO法人ゴール ゼロ調べ)。環境省の目標捕獲数300~600頭に対して達成率は7%。
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- 2020年度のノネコ1頭当たりの捕獲費用は200万円以上。
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- 2020年度のノネコの捕獲計画で誤捕獲された絶滅危惧種、固有種を含む野生生物は238頭(アマミトゲネズミ13頭、アマミノクロウサギ2頭、オットンガエル1頭、ハシブトガラス217羽、ケナガネズミ4頭、ハブ1頭)。捕獲ワナの中で死亡している絶滅危惧種も複数。
※環境省に誤捕獲されて死亡した絶滅危惧種の報告書
- 2020年度のノネコの捕獲計画で誤捕獲された絶滅危惧種、固有種を含む野生生物は238頭(アマミトゲネズミ13頭、アマミノクロウサギ2頭、オットンガエル1頭、ハシブトガラス217羽、ケナガネズミ4頭、ハブ1頭)。捕獲ワナの中で死亡している絶滅危惧種も複数。
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- アマミノクロウサギの劇的な増加と生息域の広がりによるタンカンの果樹食害が急増中。農家への助成金やタンカン防護柵の設置など、無意味なノネコ駆除費用の食害対策への転換が期待されている。
<出典>
南海日日新聞2018年2月3日 「タンカンにクロウサギ食害 大和村」
https://is.gd/PGdbJP
猫の捕獲なしでも激増して食害問題を起こしているアマミノクロウサギ
- アマミノクロウサギの劇的な増加と生息域の広がりによるタンカンの果樹食害が急増中。農家への助成金やタンカン防護柵の設置など、無意味なノネコ駆除費用の食害対策への転換が期待されている。
- 古いデータを改めないだけでなく、十分な調査もせず、説明責任も果たさず、1000年以上も前から奄美の生態系の中に組み込まれ調和し暮らしているネコだけを「新たな脅威」と無理やり位置づける「イメージ戦略」で、その駆除を強行しようとする行為は、ユネスコの理念である「多様性の尊重」、「非排他性」に反する、科学軽視の愚行である。
以上
要請書ここまで
参照
2016年度奄美希少野生生物保護増殖検討会で石田 健委員(東京大学大学院農学生命科学研究科 准教授 当時)は、ネコ3000匹殺処分計画の不要性について認め、次のように発言しています。
〈ひとつ重要なことはアマミノクロウサギにしてもケナガネズミにしてもトゲネズミにしてもオオトラツグミにしてもアマミヤマシギにしてもアマミイシカワガエルやアマミハナサキガエルにしても、マングースをしっかりと防除して、あるいは国立公園を作り、森林は林業が衰退してあまり伐らなくなっているので、回復しているのです。世界中が見ても私が見ても奄美大島は素晴らしい成果が出ていると思います。そういう成果があがっているところで、むやみに猫の問題を過大に問題視する必要はない。(中略)特に世界自然遺産の登録の時に過大に問題を表沙汰にするというのは、あまりよいことではない。誰も得しない〉(2017年2月18日の議事録)
※どうぶつ基金によるこれまでの要請書及び回答、公文書開示請求一覧は下記をご覧ください。
https://is.gd/rQFWoO
反対署名10万筆まであと少しです。changeorg.への署名をお願いします!
https://is.gd/jHDMVr
「世界遺産を口実に、 奄美や沖縄の猫を安易に殺処分しないでください!」