9_山口県下関市多頭飼育救済支援レポート(行政枠)
申請No.9
申請日:2026年5月28日
申請/実施責任者:社会福祉法人 下関市社会福祉協議会 地域福祉課
場所:山口県下関市
居住者:当事者本人(43歳、女、パート)、配偶者(57歳、男、会社員)、長男(22歳、無職)、長女(19歳、アルバイト)、次女(17歳、高校生)、三女(14歳、中学生)
居住環境:借家/集合住宅
生活保護の受給状況:受給していない
多頭飼育現場の猫の総数(うち子猫の頭数):12頭(3頭)
手術日:6月22日
協力病院:にじのはしスぺイクリニック岡山分院
チケット発行数:3枚(9頭は手術済み)
手術頭数:3頭
協働ボランティア:一般社団法人 ひとtoペット
申請から不妊手術完了までの経緯(報告書より)
- 6年前、長女が拾ってきた猫1頭を飼い始めた。
- その後、5年前に親族から頼まれて1頭、4年前に長女の友人から頼まれて1頭、さらに三女が拾ってきて4頭となる。
- 1年前の4月にこの4頭が出産。同年11月に親族から頼まれて1頭を引き取っている。今年1月に子猫3頭が生まれて現在12頭となっている。
- 三女が通う学校より、猫の糞尿に制服が汚染され臭いがきつい生徒がいると相談が入り発覚。
- 三女を担当している障害相談支援事業所職員より、三女と母親に対して、臭い対策、猫の頭数を減らすこと、飼育方法を工夫するよう指導。また、動物看護士より母親に対して、臭い対策と飼い方について指導を実施。社会福祉協議会からは家計改善についての指導が行われた。
- 関係機関からこれまでさまざな指導・助言を行ってきたが、状況の改善には至っていない。
- 当事者世帯は生活困窮状態にあり、住環境も著しく悪化している。支援を始めた時点では全頭未手術の状態で放置すれば頭数がさらに増加する懸念があった。また、三女については制服の臭気を原因としてクラスメイトとの関係が悪化。このことが原因で登校への抵抗感が強く、学校で制服の洗濯等を行っているものの根本的な解決には至っていない。
- 申請時点で9頭が手術済みであるが、このうち4頭は次女の修学旅行費の積立金を取り崩して手術費用を捻出している。世帯状況や家族の対応能力から当事者家族のみでの解決は困難である。5頭分の手術費用は団体が負担したが、団体もこれ以上の負担は難しい。以上のことから、多頭飼育救済の申請を決定。
- チケットを使用して未手術の子猫3頭の手術が完了し、全頭手術済みとなった。なお、今回は諸事情を考慮して往診による手術となった。
- 当事者宅はゴミ屋敷状態であったが、支援者と当事者世帯が共同で清掃作業を実施。空きスペースが少なくトイレの増設が難しかったが、新たに設定したトイレ5個のうち2個は複数頭が使えるサイズの大きいもので対応した。
- 不妊手術や検査を受け、猫の健康状態にも改善が見られる。関わった支援者から飼育のアドバイスをもらって飼育環境が整い、猫のストレス軽減にも繋がっている。
- 現在の住居は猫と家族5人が生活するには狭く、築年数の問題から大家から転居を求められているが、さまざまな問題があり困難である。現在は当事者同意のもと、支援者が関わって経済状況の健全化を図っている状況。
- 12頭のうちに8頭が里親に譲渡される予定。今後は飼育可能な頭数に留め、経済的に安定した後に転居して、より良い飼育環境に改善していく。
| 手術日 | オス | メス | 耳カットのみ | 計 |
|---|---|---|---|---|
| 6月22日 | 1 | 2 | 0 | 3 |
| 計 | 1 | 2 | 0 | 3 |
【現場写真(支援前)】


今回の取り組みを振り返り、改善すべき点や今後の配慮事項(報告書より)
多頭飼育崩壊の現場に関わるのが初めてであり、どのように動くべきか明確に見えていなかったため、支援をスムーズに開始することができなかった。また、多頭飼育崩壊の問題に加え、障害、生活困窮、児童福祉等の複数の課題を抱えており、多様な支援者との連携が必要であった。そのため、支援体制の構築や関係者間の連携にも時間を要した。
しかし、立場や専門性の異なる支援者と協議を重ねながら支援を進めることで、世帯の状況を多角的に捉え、丁寧な支援を行うことができた。また、それぞれの支援者が持つ知見や役割を生かすことで、より効果的な支援にもつなげることができた。
相談のきっかけとなった、中学生児童の衣服が猫の糞尿により汚染される問題については改善が見られ、臭いの問題によって不利益を被る状況も解消された。この問題への対応をきっかけとして、これまで関わっていた支援者が把握できていなかった当事者世帯の課題も明らかになり、改善に向けた支援が進められている。
課題が全て解決したわけではないものの、関係機関・支援者による支援体制を構築できたこと、また、当事者世帯が課題の改善に向けて動き始めている。
どうぶつ基金スタッフコメント
現在の社会課題が凝縮されたような案件であったかと思います。
発覚したきっかけは学校からの相談でしたが、子供がいる家庭で多頭飼育崩壊が発生した場合、臭いなどがイジメの原因となってしまうこともあります。繊細な対応が求められる支援のなかで、全頭手術済みという改善に向けたスタート地点に立てたのは、申請主体となった社会福祉協議会の皆様、ボランティア団体や学校関係者など多くの方々のご尽力によるものだと感じました。往診にご協力いただいた「にじのはしスぺイクリニック岡山分院」の皆様にもこの場を借りて感謝申し上げます。
障害の有無にかかわらず動物と健全に暮らすことができる、それを「当たり前」のことにするには、啓発だけではないさまざまなサポートや制度の改善も必要でしょう。社会福祉と動物福祉の関わり方を模索していきたいですね。



