49_愛知県安城市多頭飼育救済支援レポート(行政枠)
申請No.49
申請日:2022年12月8日
申請/実施責任者:安城市 環境都市推進課
場所:愛知県安城市
居住者:当事者本人(58歳、女、無職)
居住環境:貸家/アパート
生活保護の受給状況:受給している
多頭飼育現場の猫の総数:48頭
手術日:2022年12月19日、20日、23日、26日
協力病院:アロハ動物病院
チケット発行数:48枚
手術頭数:29頭(48枚申請して29枚使用。18頭は申請から使用までの間に死亡または逃げ出したため使用できず。残る1頭は病院へ受診したが、てんかん持ちで手術に耐えられない恐れがあると判断し手術しなかった。)
協働ボランティア:安城さくら猫の会
申請から不妊手術完了までの経緯(報告書より)
- 2002年に近所の公園から野良猫を2頭家に連れ帰った。
- 2018年ごろから30頭以上の飼育状態である。不妊手術をせず放置したことによる室内での近親交配、新たな野良猫の保護等による。
- 当事者宅に頻繁に出入りする知り合いから「霊が見える。この猫は先祖の生まれ変わりで、傷つけると自分に不幸が来る」などと言われ、その知人に餌代を負担してもらっていることもあって不妊手術や他者への相談ができずにいた。
- 生活保護担当職員は長らく多頭飼育状態であることを把握していたが、当事者が拒否したこともあり飼育実態までは確認できず。
- 生活保護担当職員が2012年に猫の頭数を減らすよう指導して愛知県動物愛護センターを紹介するも、当事者が激しく拒否したため、その後は糞尿による悪臭を改善するため清掃に関する指導を継続。2022年になって当事者から飼育頭数の多さに困っているという話があり、あらためて県動物愛護センターやボランティア団体へ相談することを勧め、それぞれの連絡先を伝えた。
- 当事者が今回協働したボランティアが主催する猫譲渡会に参加した際、現在の状況や不妊手術について相談。ボランティアから市に相談があり、当事者の経済状況や生活能力、これまでの経緯を勘案した結果、申請を決定した。
- 支援実施までに11頭が死亡、7頭が逃げ出したまま行方不明。残る30頭が手術対象となったが、うち1頭は病院に搬送するも「てんかん」であることが分かり、手術に耐えられないとの判断から対象外となった。よって、チケットにより不妊手術を実施したのは29頭である。
- 30頭については当事者が飼育を継続する。逃げ出した猫が戻ってきた場合は2回目の支援を申請する予定。
- 手術後に住居内を一斉清掃して衛生環境が向上、悪臭も軽減した。住居内が整理され、えさ場とトイレが明確になって飼育環境が大きく改善された。
- 猫の健康状態は支援前も著しく悪い状態ではなかったが、不妊手術を完了して飼育環境が改善されたことで心身の状態は良くなると思われる。
手術日 | オス | メス | 耳カットのみ | 計 |
12月19日 | 0 | 8 | 0 | 8 |
12月20日 | 6 | 3 | 0 | 9 |
12月23日 | 8 | 2 | 0 | 10 |
12月26日 | 0 | 2 | 0 | 2 |
計 | 14 | 15 | 0 | 29 |
今回の取り組みを振り返り、改善すべき点や今後の配慮事項(報告書より)
大きなトラブルやケガもなく、チケットを活用して手術や飼育環境の大幅な改善ができ、多頭飼育救済をすることができた。
どうぶつ基金スタッフコメント
支援開始時点で現場にいた30頭のうち、病気で手術不可となった1頭を除く29頭が手術済みとなりました。しかしながら、支援実施までの間に11頭が死亡、7頭が行方不明となっています。「猫の健康状態は支援前も著しく悪い状態ではなかった」とのことですが、申請から実施まで約10日間、通常はこれほど短期間に10頭以上の猫が亡くなることはありません。当事者にはその理由をよく考えていただきたいと思います。
本件は、生活保護の担当部局がかなり前から多頭飼育崩壊の状態にあることを把握していましたが、動物愛護の関連部局が把握したのは2022年でした。それも生活保護の担当部局からではなくボランティア団体の情報提供がきっかけ。市の内部で情報共有ができていれば、もっと早期に解決が見込めたはずです。
改正動物愛護法が2020年6月1日に施行され、多頭飼育崩壊などの不適切飼育に対して自治体は立入検査ができるようになりました。改正動物愛護法を「ザル法」にしないためには、今後ますます自治体内での連携が求められます。劣悪な環境で命を削るようにして生きている動物のための武器を適切に使いこなしてほしいです。