理事長 佐上邦久ごあいさつ

苦境にある時こそ小さな命を大切に

声なき弱者の代弁者でありたい

日頃よりどうぶつ基金の活動をご支援いただき、誠にありがとうございます。

2020年が始まった時、このような1年になることを誰が想像できたでしょうか。
新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、感染拡大の影響による解雇や雇い止めの増加、収入減による生活苦など暗い話題が続き、日本のみならず世界中が未だその災禍に苦しんでいます。

ただ、そのような状況においても、多くの方が小さな命に心を寄せてくださり、2020年度は年間通して無料不妊手術チケットを発行することができました。1988年にどうぶつ基金がスタートして以来、初めてのことです。
まだ最終的な頭数はご報告できないものの、皆様のおかげで、さくらねこTNR実績は年間累計4万頭以上に達する見込みとなりました。

しかし、喜んでばかりもいられません。
あらためて見渡してみると、声なき弱者である猫や犬たちを取り巻く環境は、より一層厳しさを増しています。

コロナ禍の影響による失職等でTNR活動を停止せざるを得なくなったボランティアの方、活動資金の減少や譲渡会の中止などで苦境に立たされる保護団体、全国の行政から相次ぐ多頭飼育崩壊のSOS…。
そして、自粛生活のなかで癒しを求めて後先考えずに猫や犬を飼い始め、結局お世話ができずに保健所などへ持ち込むケースや遺棄が増えているとも聞きます。

この一年を何とか乗り越え、どうぶつ基金は、いついかなる時も小さな命の味方でありたい、声なき弱者の代弁者でありたいという想いがより一層強くなりました。

また、新型コロナウイルスという感染症を通じて、野生動物との関わり方や環境保護についても考えさせられました。

ヒトの身近にいる猫や犬、牛や鶏などの産業動物、生息環境をどんどん奪われる野生動物たち…。私たちは今後どのように彼らと共存していくのか。そのようなことも、今後のテーマとして取り組んでいくことができればと考え、新たな事業を始めるための準備室を開設します。

さらに、どうぶつ基金自ら全国3カ所(大阪・福岡・宮崎)にTNR専門病院を開設し、各地域で毎月200頭、年間7,200頭のさくらねこを誕生させる予定です。全国の協力病院とともに、2021年度のさくらねこTNR実績5万頭達成を目指してまいります。

いつもいつも、ヒトの活動や身勝手な行動によるしわ寄せを受けるのは、何の罪もない小さな命です。ヒトの身勝手な行動のつけを猫や犬たちがその命で払う、そのような理不尽なことは一日でも早く終わりにしなければいけません。

その想いを胸に、どうぶつ基金は今後も歩みを止めることなく活動を継続してまいります。
引き続きご支援とご指導を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

公益財団法人どうぶつ基金
理事長 佐上邦久