【ちきゅう部だより】第9回 コンゴのリサイクル文化から考える物の価値

こんにちは
どうぶつ基金事務局です。

本日は「ちきゅう部だより」コンゴからのシリーズ・第9弾をお届けします!
長年コンゴ共和国に住んでゾウと人間の共存問題に取り組まれている
萩原幹子さんから届くお話。

今回は、コンゴでの洋服事情とリサイクルのお話です。

カラフルな色や柄がよく似合いファッショナブルな装いの人々。
実際はどんな風に売られていてどのように買えるのか、
萩原さんのレポートからはおしゃれ好きな様子を知ることができます。

そして、リサイクルされて誰かの役に立つのなら良いことだと単純に
考えていましたが、その先で起きていることまでは、思いがいたって
いませんでした。ぜひご一読ください。

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第9回 コンゴのリサイクル文化から考える物の価値


前回はコンゴの生活ゴミの扱いについて書かせていただきました。今回は、
コンゴの生活の中にもすっかり定着している「リサイクル(リユース)」
について書かせていただきます。

日本ではリサイクルと言えば、使ったものを寄付したり、リサイクルショップ
に売ったり、サイトオークションに出したりするイメージがありますね。
またプラスチック素材をリサイクルした工業品なども製造されています。
消費者としても、リサイクル品を利用する人もたいへん増えています。

コンゴの場合は、リサイクル品といえば、先進国から来るものがほとんど
です。その最も典型的なリサイクル品は、洋服です。

コンゴにはデパートやショッピングモールはありません。洋服は、市場の中に
小さな個人商店の洋服屋がたくさん集まっていたり、大通り沿いにガラス張り
のきれいなブティックが点々と存在しています。コンゴには洋服のメーカーは
無く、これらの服はフランスに行く人が仕入れてきたり(元フランス領なので
行き来が多いのです)、中国やドバイなどから輸入されています。そういった
「新しい服」はパーティーやセレモニー、きちっとした通勤着など、特別な機会
のために買うことが多いです。そして普段着としての服に大活躍なのが、古着です。



大通り沿いにあるレディース、メンズの高級ブティック

古着は古着が多く集まっている市場があり、また市場に限らず、住宅街の
民家の前、道端など、あちこちでハンガーにかけられて売られているのを
目にします。それらは種類別に卸売り業者で塊で売られているので、小売り
する人が売りたいものを選んで仕入れます。女性用ブラウス、スカート、
ワンピース、男性用シャツ、Tシャツ、パンツ、Gパン、女児用服、男児用服、
ベビー服など、細かく分かれているので、必要なものが探しやすいです。
洋服だけでなく、シーツ、タオル、テーブルクロス、カーテン、バッグ、
靴などあらゆる物がリサイクル品として輸入されています。


メンズのシャツの古着

靴と、左にはベルトのリユース品

シーツ、カーテンのリユース品

私が2008年にブラザビルに住み始めたころは、貨物船が着く商港のある
第二の町ポワント・ノワールだけで古着商売が盛んでしたが、首都までの
道路が整備され、卸売り業にレバノン人が目を付けてあちこちで店を開く
ようになり、またコンゴ人たちもこういった商売が好きな人が多く、近年
首都をはじめ全国で古着の量はどんどん増えています。40㎏の中身のある
塊で買って持ち帰り、それを開いて個々に値段を決めてばら売りするのです。
中には未使用に近い良いもの、シミがついてくたびれたものも混ざっている
ので、良いものは値段を高く設定し、なかなか売れないかもしれないような
質の良くないものは50円~120円ぐらいにします。


個人がこういう卸売り業者で塊を仕入れて、ばら売りする

古着は平均所得の低いアフリカ、コンゴにとってありがたい、需要のある
物です。古着が無くすべて「新しい服」だと服を買うお金の無い人もたくさん
出てきます。例えば新品のTシャツは2,500~5,000フラン(600~1,200円)
ですが、古着だと500~1,000フラン(120~250円)で買えます。コンゴ
の平均月収は約3万円と言いますが、月給の無いインフォーマルセクター
(税金や年金を収めていない人たち、例えば農家や市場の販売人など)で
働く人口も非常に多く、月にいくら稼いでいるかもわかりません。例えば
肉体労働を1日して稼げるのは3,000~5,000フラン(750~1,200円)
という職種もあります。そのわずかな収入から家賃や日々の食費を払ったり
するのに非常に苦労している人たちは多く、月給のある公務員や会社員に
なることが憧れでもあります。余談になりますがコンゴはコネ社会なので、
誰でもが月給のある仕事に簡単に就けるわけではないのです。

私自身も、市場にあふれる古着の中から良いものを選んで買うようになり
ました。日本の店で正規代金を払って服を買うのが馬鹿らしくなるほど、
まだまだ着ることのできる服が大量にコンゴにも届いているからです。
しかも、世界のあちこちのファッションを流行に関係なく着ることも楽しいです。

このようにコンゴでは古着ビジネスは普通に受け入れられていますが、
アフリカの他国、そして世界レベルでは問題になっていました。

ひとつは、簡単に安く手に入れられる古着が、アフリカ各国の繊維産業の
発展を阻害するというものです。ケニヤ、ガーナなどを始めとして非常に
多くのアフリカ諸国も古着を輸入していましたが、自国の繊維産業保護の
ために、古着の輸入を禁止しようという動きが東アフリカでありました。
ところがこれは大手輸出国であるアメリカから反発を受け、東アフリカ全体
としての輸入禁止はできぬまま、ルワンダだけが実行しているそうです。

もうひとつは、先進国で有り余ってしまう服を途上国に送りつけることは
すなわち、ゴミまで押し付けている、という問題です。古着の中には売れない
ような物もたくさん入っているため、売れ残った服が大量廃棄になります。
前回書きましたようにアフリカのゴミは焼却処分ではないため、ゴミの山が
増えていってしまうのです。また、南米のチリのアタカマ砂漠には、ゴミ
処分のために古着が輸入されて、自然に返らない化学素材が環境を汚染して
いることが問題になっています。日本のみならず世界中で一般的になって
いるファストファッションもこの問題を深刻化させているようです。

下記サイトに詳しく書かれていますのでぜひご一読ください。

海を渡る大量の古着、あとを追ってみると…行き着いた先で見た驚きの「古着経済」
朝日新聞GLOBE+
https://i.r.cbz.jp/cc/pl/gxrx5667/ktg1y729eudu/imdvi6zs/

ファストファッションも影響、砂漠に広がる「衣類の墓場」 : 読売新聞
https://i.r.cbz.jp/cc/pl/gxrx5667/17tvy125w023/imdvi6zs/

コンゴでは、上記ふたつの問題はどうなんだろうと思われましたか?
コンゴでは20年以上前に、アフリカン・パーニュというカラフルな生地を
作る工場が閉鎖してしまって以来、繊維産業はありません。輸入された生地
で服を仕立てる仕立て屋はたくさんいます。特に女性たちが好むパーニュは、
オランダ、中国、インドなどから輸入され、セレモニー用から通勤着、
普段着まで、幅広く仕立てて着られています。コンゴはアフリカの中でも
パーニュでのおしゃれが盛んな国のひとつなのです。いわゆる普通の洋服
(新品、古着)一辺倒にならずに、「伝統服」として共存しています。


色とりどりのアフリカン・パーニュが売られています

仕立て屋に布を持ち込み、デザインを選んで仕立ててもらいます

ゴミの問題についても、コンゴでは大量に古着が捨てられて問題になって
いるとは聞いたことがありません。ある知り合いの古着販売の女性は、
売れ残ったものはそれこそタダ同然の値段にして売りさばくそうです。
服としてだけでなく、車の整備場などが、雑巾として買うこともあるぐらい
です。私も森の仕事でマルミミゾウの畑への進入を防ぐエンジンオイルの
柵の作業のために(第3回6月号)、汚れたら捨てればよい作業着として
安いシャツを買っています。日本の江戸時代には着物が最後雑巾になるまで
使われていたというのと似ています。

また、コンゴに特有の文化「SAPE」(サップ)にも古着が役立っています。
サプールというおしゃれをしたアフリカ人の紳士のことを聞かれたことが
あるでしょうか?2014年にNHKのドキュメンタリーで取り上げられて以来、
日本でも写真集も何冊か出版されています。舗装されていない、ゴミも
落ちている土の道に似つかわしくなく、びしっとスーツを着て帽子、
サングラスをまとい、独特の歩き方をして人目を引く人たちをサプールと
呼んでいます。収入の大半を服につぎこんで、世界的に有名なブランドの
服や靴を買い、それを自慢するのです。冒頭にも書いたように行き来の多い
フランスから持ち帰ってきた人から買ったりしますが、この古着ビジネス
でも、いいものが見つかることがあるのです。お気づきかもしれませんが、
このサップ文化に象徴的なように、コンゴ人は概しておしゃれ好きなのです。

さて、服のことばかり書いてきましたが、リユースされるものは他にも
いろいろあります。先進国から電化製品やスポーツ用品、食器・台所用品
などもコンテナーで輸入されたり、現地の外資系企業や国際機関が使用済み
になったパソコンや家具などをオークションに出すこともあります。
先進国からきた中古品のほうが質が良く、長持ちすると考えられていて
需要があるのです。雨傘、食器や鍋、リュックサック、子どものおもちゃ
など日常生活でよく使われるものは、中国製の安い物がよく売られて
いますが、ともかく中国製はすぐ壊れるというのが常識です。
例えば折り畳み傘は250~400円ぐらいで買えますが、ひどいときは
1か月ぐらいで壊れます。クリスマスに親が子どもに買い与える人形や車の
おもちゃなども、お正月をすぎるともうぼろぼろになって放置されています。


リュックは長持ちしないとわかっていても中国製のものが売れています

それでも前述のように、経済的事情で安いものを買わざるを得ない事情も
あります。そして買ってはすぐ壊れ、を繰り返していると、物を大事に
しない習慣が身についてしまいます。小学生の通学に使うリュックは、
子ども自身の扱いが乱暴なせいもありますが、すぐジッパーも壊れ、親は
毎年買い替えなければなりません。ファストファッションではありませんが、
ひとつの物を大事に長く使うということは、コンゴでは非常に難しい環境
にあります。本当は丈夫で長持ちする質の良いものをコンゴ人も求めて
いますが、それは高いので手が出ない、安いものを買っては壊れ、を
繰り返すしかない、というジレンマです。しかも年中湿気の多い熱帯気候
では、あらゆるものが劣化してしまうのも早いです。私はたまに日本に
一時帰国すると、30年前ぐらいの服やバッグなどがそのままタンスに
きれいに残っているので我ながらびっくりしてしまいます。コンゴでは
半年も触らないでいると、カビが生えたり変質してしまうので、
長く大切にしようとすることも簡単ではないのです。

物にあふれた社会と、そこからは見えない問題が、コンゴでも垣間見える
お話でした。

最後にお知らせです。
文中でご紹介しましたコンゴの「SAPE」のドキュメンタリーが
特別番組「地球イチバン Decade」として、
12月26日夜10時からNHK総合テレビで放送予定です。
私がコーディネーターを務めました。
コンゴの町の様子もご覧いただけますので、ぜひご覧ください!

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【チャリティウェビナー コンゴ共和国ンボモへの旅】

私が参加するオンラインセミナーが12月27日に開催されます。

ゾウの生息地支援事業を行っている、コンゴ共和国のンボモ村への
道のりや村の様子を映像とともにお話させていただきます。
ご興味ありましたらぜひご参加ください。

日時:12月27日(水)20:00-21:00
(録画視聴 2024年1月9日まで)

https://mbomocharity.peatix.com

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萩原幹子
プロフィール
日本で会社員をしながら野生生物保全論研究会(JWCS)など
複数のNGOのボランティアを経て退職後、
2002年イギリスのケント大学で保全生物学修士取得。
2004年から3年半、中部アフリカのコンゴ共和国オザラ国立公園で、
マルミミゾウの畑荒らし問題の調査にたずさわり、そのままコンゴ共和国在住。
現在はフリーランス・コーディネーター、JWCSのプロジェクトスタッフ。
2021年から再びオザラ国立公園でマルミミゾウの畑荒らし問題に関するプロジェクトを実施中。

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あなたのご寄付が、地球を守ります。
知ることは、アクションの始まりです❣
https://i.r.cbz.jp/cc/pl/gxrx5667/z3k3hzcuaus6/imdvi6zs/

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再度のご案内となりました場合は失礼をご容赦ください。

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